新型コロナウイルス感染拡大(COVID-19)が日本経済にどのような影響を与えているのか、日本訪問を近々検討されていた方にとっては重要な情報となります。
COVID-19により、いくつかのホテルは閉鎖するなど、経済に甚大な影響を及ぼしました。日本のホテル業界の現状、そしてどのように現状に対応しているのでしょうか。
ここ数年は、インバウンドビジネス隆盛という追い風を受け、ホテル業界は活況を呈していました。ホスピタリティ業界全般が好景気に沸き、着実にビジネスは右肩上がりでした。
不動産価格に割安感があり、急速なペースでホテル開発、建設が進められ、多くの企業オーナーがホスピタリティ部門に投資し、大阪だけでも、2015年から2018年にかけて21,000室が新規開業という未曽有の建設ラッシュでした。
安倍晋三内閣の経済政策により、過去10年の訪日外国人観光客の増加の途を辿ってきました。日本経済再興計画を掲げ、中でもツーリズムは、最も期待された成長分野の一つでした。2020年までに訪日外国人旅行者数4,000万人を達成し、2030年までにさらに2,000万人誘致を目指し、官民一体となり、ホテルやホスピタリティ産業に多額の投資を行い、この驚異的な数字を達成するべくこの業界は軌道に乗っていました。
オリンピック開催年の2020年は (現状では2021年夏に延期) 、ホテル業界にとり素晴らしい年となる筈でした。ホテル開発に加えて、カジノ合法化を追い風に、日本のホスピタリティ産業は外国人投資家の関心の的となりました。2019年には3,190万人の観光客が日本を訪れ、その消費額は436億5,000万ドルに上り、2020年にはインバウンド観光客は3,400万人に達すると期待は高まっていました。
小規模の老舗旅館のPRや民泊から得られる臨時収入のためにAirbnbが多くの人々に利用されました。2008年サイト立ち上げ以来、日本のAirbnbの客室数は着実に増加し、日本国内の約6万室がAirbnbから提供されると推定されていたのです。2020年の東京オリンピックの需要拡大に応えるために、この数は更に増えると予想されていました。事実、2019年のラグビーワールドカップでは、多くの世帯がAirbnbに空き部屋を追加登録し、宿泊施設不足の受け皿として機能することで臨時収入を得る現象が見られたのです。
全国2,500の中小旅館、ホテルが加盟する日本ホテル旅館協会によると、小中規模ホテルの多くは、オリンピックによるビジネス特需を期待して、昨年、設備投資のために多額の資金を費やし、ホテル経営者たちはより快適な施設とおもてなしを提供しようと設備投資に積極的であったと述べています。
この数ヶ月間、今まで好調だった日本全国のホテルは不気味な程静まりかえり、ビジネスに重大な影響を与えました。政府により海外渡航は禁止され、国内旅行も制限を受け、ホテル業界は大打撃を受けました。
春先は繁忙期を迎えるホテルが多く、特に今年は日本中で、中でも東京ではオリンピックに向けての準備が着々と進められていましたが、残念ながら、オリンピック特需による増収の見込みは当分実現される見込みはなく、ホテル業界は深刻な業績不振に見まわれています。
クリエイティブな広告を打ち出したり、カフェやバーを併設するホテルはプロモーション展開することで、なんとかこの苦境をしのぐ努力をしています。大阪のコロナホテルのオーナーによると、昨年同時期の売上と比較して、今年はその3分の1まで落ち込んでいるということです。国内旅行や業務渡航に利用してもらうために、宿泊料金を下げざるを得えない状況があります。
東京オリンピック延期の決定を受け、ホテルや旅館の予約数は激減しました。また追い打ちをかけるように、政府が不要不急な旅行の自粛要請が、多くのキャンセルに繋がり、そのほとんどは、ホテルがキャンセル料を請求できないという厳しい現実に直面しています。
今年の4月の訪日外国人旅行者数は、2019年同月の5%にも達しませんでした。経済アナリストは、旅行業界への甚大な影響を語っており、特にインバウンド観光客の多い大都市であり、中国から毎年何千人もの観光客を迎え入れる東京や大阪のホテルや観光業の厳しい現状は目に余るものです。
REIT(Real Estate Investment Trusts:不動産投資信託の略)は、ここ数ヶ月の株式の大幅な下落を報告しています。ホテル資産銘柄に着目すると、東京証券取引所での株価の急落が見られました。このまま休業が続き、政府からの財政支援もなければ、多くのホテル経営者は倒産に直面せざるを得ないと予測されます。特に、国内ホテルチェーンは、インターナショナルホテルチェーンに比べ規模も小さく、資本も少ないため、さらに苦戦を強いられることが予想されます。
日本の観光業界は全国で約470万人の雇用を生み出し、日本経済の約5%を支えています。ホテル従業員は現在、自宅待機を余儀なくされ、標準賃金の3分の2に相当する雇用調整助成金を政府から受けている状況です。
また、ホテルチェーンの多くは、この苦難を乗り越えるために追加支援金を求めています。日本政府は、経済危機によるダメージ緩和策として1,370億ドルの出資を現在検討中です。
以前のレベルまで立て直すことが果たし可能なのでしょうか? それとも、観光客からの売上に頼らざるを得ない小規模ホテルにはすでに手遅れなのでしょうか?多くのホテル事業が危機に面していることは間違いありませんが、ホテル経営者たちは前向きな姿勢を保つため、政府から補助金を受け、事業再建にはまだ間に合うという見方を示しています。新型コロナウイルスの流行による影響で、ホテル投資マインドは低下し、収益はほぼ見込めませんが、ホテル業界の市場は回復すると見られ、新型コロナウイルス感染拡大の収束以降に資産レベルは急速に正常化すると期待しています。
ホテルオーナーの27%は完全回復までまずは6ヶ月以内、残りの48%は完全正常化に6ヶ月から1年かかると想定しています。また、75%のホテルは1年以内に完全に正常化に戻ると思われています。したがって、ホテル業界銘柄の株価が急落したこの時期が、投資には利益リターンが期待できる良いタイミングと言えるかもしれません。
5月25日に非常事態宣言が解除されて以来、国内旅行の需要は急増していますが、訪日マーケットの低迷回復は、まだ先の話になりますが、国内マーケットにおいては、国内線フライト運航や観光地が再開され、国内旅行者の需要回復により、再び盛り上がりを見せ始めるものと推測されます。